【修理依頼】Dioカーボン嚙み
エンストしてエンジンが始動しなくなったとの事で、修理の依頼をいただきました。
まずは、簡易的なカーボン除去として、プラグホールからエンジンコンディショナーを注入します。
スパークプラグを外したところです。
見にくいですが、プラグホールが見えます。
プラグホールにエンジンコンディショナーを注入します。
こんな感じで、燃焼室をエンジンコンディショナーで満たしてやります。
しばらく放置してから、セルでエンジンを回します。エンジンコンディショナーがプラグホールから勢い良く飛び出します。
これを数回繰り返します。
スパークプラグを取付け、プラグコードをはめてエンジンが始動するか確認します。エンジンが始動する気配はまったく感じられませんでした。シリンダーヘッドを外してバルブを洗浄しないと直りません。大変な作業になりますが、エンジンを下ろしてシリンダーヘッドを分解していきます。慣れれば大したことではない作業です。
エンジンに繋がっているハーネスとホースを外していきます。ハーネスは左図のように一か所にコネクタが集中していますので、コネクタを外していきます。
アース線だけコネクタではなくビス止めされているので、注意します。次の画像にあります。
スロットルケーブルを外します。左図の赤丸で固定されています。
フューエルホースを外します。
フューエルホースの先端は、まずゴムを引っ張ります。
ゴムが取れたら、ホースの先端を引っ張れば、ホースが抜けます。
シリンダーヘッドカバーからブローバイホースを外す。
このホースは、エアクリーナーに繋がっているため、エアクリーナーを外す時はこのホースを外す必要があります。エアクリーナー側で外しても良いですが、後でシリンダーヘッドカバーを外すので、こちら側を外しましょう。
エアクリーナーを外します。
エアクリーナーのアウトレットチューブを固定しているバンドを緩めて、スロットルボデーからアウトレットチューブを抜き取ります。
エアクリーナーBOXを固定しているボルトを外します。
エアクリーナー後ろにホースが繋がっているので、これも外します。
クラッチカバーに繋がっているホースを外します。
これで車体側とクラッチカバーを切断出来ました。あとは、リヤブレーキケーブルです。
ブレーキアジャストナットを外します。
リヤブレーキケーブルを固定しているステーのボルトを外します。
リヤブレーキケーブルが外れました。
これでエンジンを下ろす準備が整いました。
リヤサスを固定しているボルトを外します。
このボルトを外すと、車体が下がるので気を付けましょう。
ボルトを抜く時は、車体を少し持ち上げながら行なうと抜きやすいです。
エンジンを固定しているボルトを外します。
このボルトを外すとエンジンが外れるので、注意します。
エンジンが外れました。
ここからは、エンジン単体の作業に移ります。
マフラーがじゃまなので、先にマフラーを外していきます。
マフラー固定ボルトを外します。
エキパイ固定ナットを外します。
これでマフラーが外れます。
シリンダーカウルを外していきます。
シリンダーカウルは、上・下・横の3つで構成されています。
こちらのビスも外します。
シリンダーカウルを固定しているボルトを外します。
シリンダーカウルに付いているハーネスのクリップを外します。
インジェクタのコネクタを外します。
インジェクタのハーネスを固定しているクリップを外します。
O2センサーのコネクタがシリンダーカウルの爪に引っかかっているので、これを外します。
シリンダーカウルの爪からハーネスを外す。
シリンダーカウル下側を外します。
スロットルボデーをインテークマニホールドごと外します。
スロットルボデーが外れました。
シリンダーカウル横側を固定しているボルトを外します。
シリンダーカウル横側が外しました。
次はシリンダーカウル上側を外します。
シリンダーカウル上側は、そのまま手で取れます。
シリンダーヘッドカバーボルトを外します。
シリンダーヘッドカバーが外れました。外れない場合は、プラスチックハンマーで軽く叩いてやれば外れます。
クランクを回し、圧縮上死点に合わせます。
フライホイールのサビが酷いので、刻印に黄色のマーカーで印を付けています。
バルブの開閉を見ながらフライホイールの刻印と、エンジン側の切り欠きを合わせて、圧縮上死点にします。
「バルブの開閉を見ながら」とは、具体的に言うと、「排気バルブが閉じる直前に吸気バルブが開き始めた」時の上死点が排気上死点なので、その後に来る上死点が圧縮上死点です。なぜ圧縮上死点に合わせる必要があるかと言うと、圧縮上死点は、吸気バルブと排気バルブが共に閉じていますので、ロッカーアームがバルブを押し下げていない状態となります。このフリーの状態で作業したいためです。
圧縮上死点の時の、カムスプロケットの位置を覚えておきましょう。
見にくいですが、カムスプロケットにスリットが入っています。
スリットに赤線を入れています。この状態が圧縮上死点時のカムスプロケット位置です。少し斜めになっているように見えます。カムスプロケットを組み付ける時は、この状態で組み付けます。ズレるとタイミングが狂うので、気を付けましょう。
カムスプロケットを固定しているボルトを外します。クランクが回転しないように、スピンナーハンドルでクランクを固定します。
カムスプロケット固定ボルトがエンジン内に落下しないように、ウエスを突っ込んでボルトを外します。
カムチェーンテンショナーを固定しているボルトを外します。
このボルトを外す前に、カムチェーンテンショナー中央のビスを外しておくといいです。このビスが結構固いので、カムチェーンテンショナーを外した後だと苦労します。
カムチェーンテンショナーが外れました。
カムチェーンテンショナーを外したので、カムチェーンがフリーになりました。カムスプロケットが手で外せます。
シリンダーヘッドを外す作業に移ります。
シリンダーヘッドナットと、シリンダーヘッドボルトを外します。
シリンダーヘッドナットは、均等に緩めていきます。(4つのナットを少しずつ緩めていく)
カムシャフトホルダーを抜き取ります。
シリンダーヘッドにO2センサーが付いていますので、ハーネスを外します。
手で引っ張れば取れます。
シリンダーヘッドを取り外します。固くて取れない場合は、プラスチックハンマーで軽く叩いて取ります。
ピストンが見えます。カーボンで汚れています。
シリンダーヘッドガスケットを綺麗に取り除きます。
シリンダーヘッドの燃焼室です。同じくカーボンで汚れています。
シリンダーヘッドガスケットを綺麗に取り除きます。
バルブを外す作業に移ります。
バルブスプリングコンプレッサーを使って、バルブスプリングを押し縮めます。
コッターピンが浮いてきます。
浮いたコッターピンをマグネットで取ります。無くさないように気を付けます。
バルブスプリングとバルブスプリングリテーナーを外します。
もう片方のバルブスプリングも同じ要領で取り外します。
バルブが取れました。特にエキゾースト側が汚いです。
ナイロンたわしと、エンジンコンディショナーでバルブを磨きます。
綺麗になりました。力がいる作業です。指が疲れますが、根気よくカーボンを除去します。
シリンダーヘッドの燃焼室も、ナイロンたわしとエンジンコンディショナーで綺麗にします。
バルブステムシールを新品に交換します。
手で取れます。
劣化したバルブステムシールは、エンジンオイルのオイル下がりの原因となり、マフラーから白煙が出ます。ここまで分解しているのだから、ついでに新品に交換します。
ピストンも洗浄しました。
新品のシリンダーヘッドガスケットを組み付けます。
後は、逆の手順で組み付けていけば完了です。
無事にエンジン始動しました。アイドリングも安定しています。