【公開修理】アドレス V50 カーボン嚙み エンジン分解編
今回は、原付スクーターによくあるカーボン嚙みの修理を公開します。
大まかな作業の流れは、
1.外装の取り外し
2.車体からエンジンを取り外す
3.エンジンをバラし、バルブの清掃、組み付け
4.エンジンを車体に取り付ける
5.外装の取り付け
となります。
まずは、バッテリーを外します。ステップボードにあるビス2本を外し、フタを取ります。
バッテリーが見えますので、+端子と-端子を外し、バッテリー本体を取り外します。
エンジンオイルを抜きます。下から覗き込むとドレンボルトが見えます。
トレーでオイルを受けます。
忘れないうちに、ドレンボルトを付けます。パッキンは新品を使います。
メットインを開け、下記6点のビスを外します。
タンクキャップを外します。
インレットラバーをマイナスドライバーで外します。
ヘルメットボックスを外します。
下記ドレーンホースがつながっていますので、こちらも抜きます。このホースは、給油中に燃料をこぼした時に、燃料を地面まで導くためのものです。
タンクにゴミが入らないよう、キャップを締めておきます。
トリムクリップを外します。まずは、クリップの真ん中をドライバーなどで押して、内張剥がしで取ります。
画像は車両左側です。車両右側も同じように取り外します。
画像は車両右側から見たものです。下記2点のトリムクリップを取り外します。車両左側も同様に外します。
車両右側からステップボードの下を覗き込んだ画像になります。アンダーカバーのトリムクリップを6箇所外します。アンダーカバーは外さずにそのままにしておきます。
インナーカウルの下記2点のビスを取り外します。
インナーカウルの上側4点のビスを取り外します。
フロントパネルの下記3点のビスを取り外します。
フロントパネルの下側の2点のビスを取り外します。そしてフロントパネルを取り外します。
サイドカウルの下記4点ビスを取り外します。サイドカウルを取り外します。
サイドアンダーカウル(名称が正しいか不明です)の下記1点ビスを取り外します。そして、サイドアンダーカウルを取り外します。
ボディカウル下側の下記1点ビスを取り外します。そしてシート下カバーを取り外します。
さて、ここからは、車体と配線・配管類を切り離す作業に移ります。
ヘルメットボックスの下を写した画像です。エンジンにつながっている配線と配管をすべて取り外します。
- インジェクタのコネクタ
- クランクポジションセンサのコネクタ
- スターターモーターのコネクタ
- スロットルポジションセンサのコネクタ
- エンジン温度センサのコネクタ
- 名前が分かりません
- 燃料ホース
1のコネクタを外します。
2のコネクタを外します。配線がクリップで固定されているので、クリップも外します。
3のコネクタを外します。
4のコネクタを外します。
5のコネクタを外します。
6は作業性が悪いので後回しにします。
7のフューエルホースを外します。
フューエルホースを固定しているビスを取り外します。
ハーネス束のクリップを取り外します。
ブローバイホースを取り外します。画像中央は、スロットルボディカバーから取り外している画像で、画像右は、エアクリーナーボックスから取り外している画像です。
スロットルボディカバーを取り外します。
エアクリーナーボックスとスロットルボディカバーを繋いでいるホースのホースバンドを取り外します。
エアクリーナーボックスを取り外します。
ここで、6のコネクタを外すのですが、まずはインテークマニホールドを取り外します。
インテークマニホールドが外れたら、6のコネクタにアクセスしやすくなりますので、コネクタを外します。
車両右側から見た画像です。スターターモーターカバーの下記2点ビスを外します。
マフラーを外します。まず先に排気温センサのコネクタを外します。画像は、車両左側から見たものです。
以下の4点を外します。
次はリヤブレーキケーブルを外していきます。まずは、ケーブルの先端に付いているナットを外します。
ナットが外れたら、ケーブルを引っ張ってピンからケーブルを抜き取ります。ばねを無くさないようにしましょう。
次は逆(車両右側)から作業します。ケーブルを固定している金具を外します。
戻って、車両左側からの作業です。ケーブルがフックに引っかかっているので外します。これでリヤブレーキケーブルとエンジンが切り離せました。ケーブルはそのままにしておきます。
次はリヤサスを外すのですが、車体の荷重がかかっているので、車体を上から吊るして荷重をリヤサスにかからないようにした状態でリヤサスを外します。私は上からキャリアを持ち上げていますが、車体を下からジャッキなどで持ち上げても良いです。
リヤサスとエンジンを固定しているボルトを外します。
エンジンと車体を固定しているボルトナットを外します。
あとは、エンジンを引っ張てやればエンジンが外れます。
ファンカウリングを固定しているビス4点を外し、ファンカウリングを取り外します。
シリンダーカウリングを取り外します。
シリンダーヘッドカバーを外します。
ピストンを圧縮上死点に合わせます。合わせ方は次の通りです。
フライホイールを手で回して(時計回り)、エンジン本体の合わせマーク(▽)とフライホイールのTOP刻印(-)を合わせます(画像では、分かりやすく黄色のペンで印を付けています)。この位置が上死点です。これだと圧縮上死点か排気上死点なのか分からないので、ロッカアームの動作を見て判断します。フライホイールを手で回して、インテーク側のロッカアームが作動し終わってから合わせマークが揃った時が圧縮上死点です。ちなみに排気上死点の場合は、インテーク側もエキゾースト側も少しだけ作動している状態となります。分からない時は、吸気工程・圧縮工程・燃焼行程・排気工程の4工程をフライホイールを回しながら理解しましょう。
カムスプロケットとシリンダーヘッドの位置はこのようになります。画像は分かりやすく黄色で印を付けています。
カムチェーンテンショナアジャスタを外します。
カムスプロケットを外します。固定ボルトがかなり固いので、クランクが回らないようにスピンナーハンドルを地面に当てて回り止めをします。ボルトがなめないように注意しましょう。また、ボルトをエンジンの中に落とさないようにウエス等で穴を塞ぎましょう。
カムスプロケは、とりあえず横にずらしたまま作業を続けます。この時点でカムスプロケを取り外しても問題ないです。
シリンダーヘッドボルトを外します。下記画像の左側2個の赤丸です。
そのあと、シリンダーヘッドナットを、対角線上に均等に緩めて外します。
シリンダーヘッドを抜き取ります。固い時は、プラスチックハンマーなどで軽く叩いてやります。カムスプロケを外します。
シリンダーヘッドが外れました。カーボンだらけです。
カムチェーンテンショナが邪魔なので取り外します。
ロッカアームシャフトを外します。こちらはインテーク側です。
M8のボルトを準備して、ロッカアームシャフトに手締めで挿入します。
挿入したら、そのまま手で引っ張ってやれば取れます。
ロッカアームを取り外します。
続いてエキゾースト側のロッカアームシャフトを、同じ要領で取り外し、ロッカアームも取り外します。
バルブスプリングコンプレッサーを使って、バルブを取り外していきます。
バルブスプリングリテーナのサイズに合う駒を選びます。
バルブヘッド下部の大きさに合う駒を選びます。
バルブスプリングコンプレッサーで締めこんでいき、バルブスプリングを圧縮します。
こんな感じでバルブスプリングを縮めていきます。バルブスプリングを、コッタピンが浮くまで縮めます。
このくらいでコッタピンがフリー(浮く)になりますので、マグネットでコッタピンを取ります。
取り外したコッタピンは、無くさないようにしましょう。
バルブスプリングリテーナとバルブスプリングを取り外します。
シリンダーヘッドの下側からバルブを抜き取ります。
エキゾースト側も、同じ要領で外します。(省略します)
バルブが取れました。カーボンがだいぶ溜まってます。これでは圧縮漏れします。
カーボン除去の作業に入ります。エンジンコンディショナーとナイロンたわしを使います。
バルブフェースは精度が大事なので、ヤスリ等で磨いてはいけません。
ボール盤にバルブを付けて回転させて、ナイロンたわしを当てる方法もありますが、私はひたすら手でこすりました。バルブフェースが傷つかないように慎重に作業します。
こんな感じで、ナイロンたわしをちょうど良いサイズにカットして使います。
エンジンコンディショナーを付けてはナイロンたわしでこすって、を繰り返します。
綺麗になりました。画像を並べて見比べると、差は歴然です。
シリンダーヘッドの燃焼室も、エンジンコンディショナーとナイロンたわしで綺麗に洗浄します。
ここから最後まで、元に戻す作業となります。折り返し地点です。
バルブを組み付けます。バルブステムにオイルを塗布します。バルブステムエンドにもオイルを塗布します。バルブステムエンドにオイルを塗布する理由は、コッタピンを取り付ける時に、コッタピンがバルブステムエンドに張りついて組みやすくするためです。
バルブスプリングとバルブスプリングリテーナを載せます。
ばらした時と同様に、バルブスプリングを圧縮します。
バルブステムエンドにコッタピンをセットします。ピンセットを使うとやりやすいです。細かい作業ですので、イライラせずにやりましょう。セットしたらゆっくりとバルブスプリングコンプレッサーを緩めていきます。
ロッカアームの取り付けます。まずロッカアームをセットします。
ロッカアームシャフトにM8ボルトを付けた状態で、ロッカアームシャフトを挿入します。
M8ボルトを押し込んで、M8ボルトを緩めてロッカアームシャフトを残します。
エキゾースト側も、同じ要領で取り付けます。
カムチェーンテンショナガイドをシリンダーヘッドに取りつけます。
シリンダーヘッドガスケットをきれいに剥がします。剥がした後は、スクレーパーやオイルストーンできれいにします。シリンダー側とシリンダーヘッド側の両方をきれいにします。
ついでにピストンも洗浄します。バルブと同じ要領で、エンジンコンディショナーとナイロンたわしできれいにカーボンを除去します。
新品のシリンダーヘッドガスケットを入れます。
シリンダーヘッドを組み付けます。カムチェーンテンショナガイドがカムチェーンの上に来るようにしましょう。
カムシャフトにピンを入れます。落とさないように注意しましょう。
カムシャフトにカムスプロケをはめます。カムシャフトのピンが、カムスプロケの穴に入るようにします。
取り外した時と同様に、フライホイールの合わせマークと、カムスプロケの合わせマークを一致させます。
カムスプロケをボルトで固定します。ボルトにゆるみ止めを塗布して締め付けます。
締め付けトルクは、9N・mです。
シリンダーヘッドのボルトを手締めします。
シリンダーヘッドのナットを手締めします。シリンダヘッドナットのネジ部と座面にエンジンオイルを塗布します。シリンダヘッドナットは対角に均等に締め付けます。
シリンダヘッドボルト 締め付けトルク:10N・m
シリンダヘッドナット 締め付けトルク:11N・m
次はカムチェーンテンショナです。上のボルトとバネを外します。
ロッドを押し込んだ状態で爪をかけます。その状態でシリンダーへ取り付けます。
締め付けトルクは、10N・mです。
ボルトとバネを取り付けます。
シリンダヘッドカバーを取り付けます。締め付けトルクは以下の通りです。
仮締め:10N・m
本締め:14N・m
スパークプラグを取り付けます。締め付けトルクは、11N・mです。
シリンダカウリングを取り付けます。
ファンカウリングを取り付けます。
キャップを取り付けます。
車体にエンジンを載せます。
エンジンマウンティングシャフトを取り付けます。締め付けトルクは、60N・mです。
リヤサスとエンジンを固定します。締め付けトルクは、32N・mです。
後は、外した配線・配管と、外装を取り付けて終了です。バラした手順の逆をやるだけなので割愛します。
エンジンをかけて試乗しました。確実にトルクUPしているのが実感出来ます。
今回は、エンジンをバラしてカーボンを除去しましたが、のちに簡易版も投稿するのでお楽しみに。